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出発前のやりとり
旅が始まる2ヶ月前。
ボルネオオラウータンドットコム。
HPでみた現地のリバークルーズ会社にメールで連絡をとった。
あっているのか分からない文法を駆使し、最低限の内容が相手に伝わるように短く綴った。
そもそも、年末にリバークルーズは運行しているのか、そんなことも心配していた。
数日後メールが返ってきた。
返信用の定型文なのかとても長い文書が返ってきた(画像はその一部)。その中でも、しっかりと僕が聞きたかった内容に対して返答もしてくれていた。僕が聞きたかったことが伝わった。メールをする前の不安はなくなっていた。
そして、メールからわかったこととして、年末でもリバークルーズは手配できそうだということ。
また、船を一隻チャーターしなければならないのだが、一人でも費用は予想していたよりも高くないことだった。
あとはカリマンタン島までの飛行機を手配すればよさそうだ。
空港まで迎えにきてくれるらしい。ここまできたら、カリマンタン島まで行って、物事が進む通りに旅を楽しむのみだ。
たとえ、迎えにきていなきても、費用は払っていないのだから心配はない。着いてから考えればよい。そんな大きな気持ちでいた。
リバークルーズ DAY1
空港の外に出ると、名前の書かれた紙をもった現地の人が数名いた。
ツアー旅行やホームステイなどでよく見るやつだ。
僕の名前が書かれた紙を持った人が一人いた。
”Are you Edy?”
“Yes.”
Edyは実在した。
早速、4WDのクルマに乗り、クマイ港へ向かう。
平坦な道を進みながら、町のこと、家族のこと、様々なことを話したことを思い出す。
車を降り、船へ向かう。
「乗るのは僕一人だけど、どんな船に乗るのだろう。」
日本を出発する前からずっと抱いていた疑問。
港には大きな船から小さな船まで停泊していた。
エディに着いていくと、ある船に案内された。
そもそも船で旅をしたことがなかったので、大きいのか小さいのかわからなかったが、一人の僕には十分な大きさだった。
青と白のペンキで塗られ、何年も使われている船といった印象。
日本の屋形船のような感じだあろうか。細長いフォルムに屋根がついてるだけ。
どこで生活するのかといえば、船上のようだった。いわゆるデッキ部分。そこには、簡易なダイニングテーブルと椅子。そして、地面の上には敷布団が置かれていた。
オラウータンを見に行く、リバークルーズの船はどれも同じような形をしていた。
多少、乗る人数によって大きさは変わるようだが。
船に乗って一緒に旅をするメンバーは、僕、エディ、運転手、アシスタント、クックの5人。
僕以外のメンバーは船の中で生活するようだった。
楽しい旅になりそうな気がした。
船は港から、まずは川の河口に向かいそこから、セコイヤ川を北上していく。
アマゾンの奥地へ探検に行くような感覚になる。
時刻は11時を回っていた。船が出発してすぐに、食事がテーブルの上に並べられた。ランチタイムが始まるようだ。
見るものすべてが新鮮で、時計の時間と体感の時間にずれが生じていた。
もう昼なのかという感覚だ。
用意された食事を見て、びっくりした。これは一人分なのか。
インドネシアの庶民料理のフルコースといった感じだ。
出されたものなのだから、頑張って食べなきゃと思い、できる限り口に頬張る。
見た目とは違い、どの料理も美味しかった。日本人の舌にも合う味付けだった。
デザートのスイカが食べきれず残してしまったが、殆どの料理を食べた。
この度の専属クックが丹精込めて作ってくれたのだから、一生懸命食べた。
大きな雲。強い日差し。
雲の動きが激しく、青い空になったり、曇り空になったり熱帯雨林の気候はすぐに変化していく。
ただ単に空を見上げていても飽きない。
遠い日本のことを頭に浮かべながら、空を見ていると空はこんなに広いのかということに気付かされる。
日本の空とここまで違うと、空がつながっているという事実が嘘なのではと思ってしまう。
川を北上していくにつれ、川の幅は細くなり、海水と淡水が入り混じり、徐々に茶色っぽい水になってきているのがわかる。
両岸に大小様々な木々や植物が生え茂り、真ん中には川という景色がしばらく続いていたので、時間の感覚が麻痺していた。
そして、遭遇。
一時間くらい立っただろうか、船は最初の目的地、タンジュン・ハラパンキャンプに着いた。
目的地といっても、なにか街があるというのではなく、木の桟橋があるのみ。オラウータンが集まる場所、餌やりスポットがあるというだけだ。
タンジュンプテン国立公園には、何箇所かオラウータンの餌やりスポットがあり、時間になると、レンジャーが大きなリュックに大量のバナナを詰めてやってくる。
そのことを知っているオラウータンはレンジャーが来たことを知ると、餌やり場に集まってくる。
桟橋で船から降り、目的地の餌やりスポットまで森の中を進んでいく。
リバークルーズをしている他の船もこの場所に集まってくる。
他にもリバークルーズをしている観光客が多くいることにここにきてやっと分かる。
どこにオラウータンがいるのか周りを探しながら進んでいく。
進んでいくと、周囲から「パシャン。」「ボキッ。」といった、枝が大きくしなる音や折れる音が近づいてくる。
どこから音が聞こえるのか頭上を見渡す。
木が揺れている。
揺れている木を目で追っていくと、大きなオラウータンがいた。
しなる木々を上手に使い、木から木へと渡っていく。
望遠レンズを取り付けたカメラを構え、遠くで木々を移動しているオラウータンや餌のバナナを食べる姿を覗いている。
生物学的には同じヒト科。
オラウータンというスターの木渡りショー&バナナ早食いショーを見せられているようだ。
船に戻り、さらなる奥地へと出発した。
太陽の日は陰り、きれいな夕日へと変わっていく。
言うまでもなく、ボルネオの夜は美しかった。
余計な音や光はない。すべてがあるがままだ。
世界中でオラウータンに一番近い地にいるということを思うと、高揚感が高まった。
夜は寝れるだろうか。